일본2017. 10. 20. 13:20

日本の生産年齢人口(15歳以上~65歳未満)は1995年、総人口は2004年にピークアウトし、減少が続いているなかで、増加しているのが60歳以上のシニアである。そして、シニア層は総じて貯蓄が豊かだ。

日本の個人金融資産残高は約1500兆円ともいわれているが、その60%を60歳代以上が保有している。そして、2012年からは団塊世代(1947~1949年生まれ)が相次いで本格リタイアとなる65歳を迎えている。この団塊世代は今までにも様々な消費トレンドを創ってきた世代である。この世代がリタイアに伴い自由時間が豊富になれば、今後様々な消費行動に走ることが期待できる。

2012年mifデータ(2012年6月実施)および全国消費実態調査(総務省統計局)などを用いて、三菱総研で予測を行った日本の将来世帯消費支出である。この予測では、今後2020年まで世帯主が60歳以上のシニア層世帯の消費支出は、年平均で1.9%程度の増加傾向となる一方、世帯主が39歳以下の若年層世帯による消費支出は-1.4%となる結果となっている。そして、2020年には世帯消費支出のうち、60歳以上世帯が占める比率が35%と2010年時点より3%高くなる結果となっている。今後、国内市場のシニア世帯の比重が高まるのは確実である

 

 

 

また、消費支出全体に占めるシニア比率の上昇は質の変化ももたらす。mifデータで年代別消費支出の違い、シニア層世帯は若年層世帯と比較して食費が6%、教養娯楽費が3%高くなっている。さらにシニア世帯の中でもリタイア世帯は現役世帯より食費が2%、教養娯楽費が3%高くなっている。こうした支出の変化は従来にはなかった市場を創出し、新たなビジネスチャンスを生む可能性がある。

昨年あたりから多くの企業がシニア市場へ参入しているのは、こうした動きを視野にいれたものであろう。

しかし、拡大するシニア市場と新たなビジネスチャンスを求めて、シニア市場への参入してみたものの、従来の若者を対象とした市場との違いに戸惑っている企業も、実際は多いのではないだろうか。

シニア市場は、シニアが持っている特性ゆえの難しさがありそうだ。mifデータからシニア市場を難しくしている要因がいくつか見えてくる。

 第一は価値観の多様化による消費ニーズの多様化・細分化である。長い人生の中には価値観に影響を及ぼす経験が多数ある。青春時代を過ごした環境、職場環境や家族構成、離婚やリストラの経験、病気の経験、孫の誕生など様々なことが個々人の価値観に影響を与えている。

mifでいくつか例を見ると、60歳代離婚経験者は既婚者に比べて「気ままな生活をしたい」意向が7%(既婚者50%、離別者57%)高くなっている。また、孫の誕生は「自分ひとりの幸せよりもみんなの幸せを考えたい」意向を6%(孫がいる人56%、孫がいない人50%)増加させている。こうした様々な経験の積み重ねにより、価値観は多様化していく。価値観の多様化は、ひいては消費ニーズの多様化・細分化をもたらしている。

第二は貯蓄があるにもかかわらず財布の紐が固いということである。mifによると「むだな出費はせずに、本当に必要なことだけにお金を使いたい」という意向が、シニア層(60歳代)は若年層(39歳以下)と比べると11%(シニア層83%、若年層72%)高くなっている。リタイアをすれば所得は減少する。今後の生活資金や万一健康を害したときのため、簡単に貯蓄は崩せないという意識もあるだろう。簡単には財布の紐を緩めてくれないのである。

第三は商品・サービスの情報伝搬役が少ないことである。新商品がでると興味をもってすぐに購買する層をイノベーター、機能や価格面を吟味し自身にとって有益なものと判断すれば、購買活動をおこす層をアーリーアダプタと呼んでいる。mifによると若年層ではイノベータとアーリーアダプターの合計が21%なのに対して、シニア層は11%程度にとどまっている。シニア市場の場合、良い商品やサービスを開発しても、その良さをシニア層になかなか気付いてもらえず、その結果、普及が進まない、という状況が生じているのである

従来の若者市場のように、世代共通のニーズに合ったものを供給していけば市場が切り開ける、というものではなさそうだ。
では、シニア市場を攻めるにはどのようなことが必要であろうか。今後のシニア市場のトレンドを、価値観の持ち方やその変化から読み解いていきたい。

2011年mifデータ(2011年6月実施)を用いて、日本人の価値観が震災前後でどのよう変化したかマッピングしたものだ。つまり2011 年6月現在の意識が高く、しかも震災後に増大している価値観に注目すれば、「安全安心志向」、「帰属意識」、「普遍主義」、「慈善」といった「絆志向」にグルーピングできる。これまで日本は都市化や単身化が進み、プライバシーが重視され、地縁・血縁の希薄化が指摘されてきた。今回の震災で、自分のことを本当に心配してくれるのは家族であり、地域コミュニティであることを、多くの国民が再認識した結果、「絆志向」が台頭してきたのであろう。

一方、「権力」については、アンケート実施時点での意識も低く、震災後に最も減った価値観となっている。「偉くなる」「お金持ちになる」という価値観が廃れていることがわかる。こうした流れをみると、自分自身の幸せ(利己)よりも、他者の幸せ(利他)を願う価値観とみることができる。

また、2011年mifデータから消費に関する意識を整理したものである。これによると、「流行よりも機能性を重視した商品を買いたい」、「むだな出費はせずに、本当に必要なことだけにお金を使いたい」、「ものを増やさない生活をしたい」という意識が高い。また後者2つについては震災前後での変化も大きくなっている。

ものがあふれる生活を送っている中で、震災により家財道具等多くのものを消失した光景を目の当たりし、ものを増やす生活に対する意識が減少傾向を示しているのであろう。そして「本当に必要なこと」や「流行よりも機能性を重視」し、自分にとって有益なもののみにお金を使う、という意識が高くなっているようだ。ものを「所有」するのではなく、「使用」することに価値を見いだしているのである。

我々はこうした価値観の変化を一過性のものではなく、新しい流れ(ニューノーマル)として捉えている。そして、この価値観の変化を年代別に示したものである。これによると、絆志向、モノを持たない、という意識はシニアのほうが若い世代より高いことがわかる。

震災によって、日本人の価値観は「利己」から「利他」へ、「所有」から「使用」へと変化を遂げたが、この変化は特にシニア層についてより顕著な傾向としてみてとれるのである。

こうした価値観の変化はどのような消費トレンドを生むのであろうか。

「利己」から「利他」という流れでみれば、「自分消費」から「つながり消費」、すなわち人と違うことに価値を見いだす消費から、人と分かち合うことに価値を見いだす消費へと変化しているのであろう。また、「所有」から「使用」という流れでみれば、「モノからコトへ」、すなわち新しいものに価値を見いだす消費から、経験や共感に価値を見いだす消費への変化しているのではないだろうか。

Posted by THOMAS K